吉野朔実「period(3)」

period 3 (IKKI COMIX)

period 3 (IKKI COMIX)

前の刊行から3年4ヶ月……とても待った。
兄弟の預けられていた施設は火事で燃え、3集では親戚のアパートでいとこと三人、ほとんど子供たちだけの環境で質素に(でも、逞しく)暮らす日々が描かれている。ますますハッピーエンドは想像しづらい展開になったけれど、久しぶりに続きが読めたことはそれだけで嬉しかった。


吉野朔実さんの描く人物たちの、他人との線の引きかたは相変わらず。
これまでの作品にも何度か出てきた「プレゼント=暴力」というエピソードが、今回最もわかりやすく登場している。裕福な家庭の娘である恭子が、たぶん素朴な善意から持ってきたクリスマスプレゼント。それが受け取る彼らのプライドを傷つけることを、兄弟と同居している女の子、まいらは見抜き、許さない。「タダのものなんて受け取ってたまるか。あとで何を払わされるかわかったもんじゃない。」まだ中学生だというのに、ここまできっぱりとした台詞を放つ賢さはいかにも吉野作品のキャラクターのものだ。年齢や立場には依らず、いつも屹然としている。


児童虐待、いじめ、両親のいない環境……といった内容のヘビーさから「面白い」とも「好きだ」とも言いにくい作品ではあるけれど、やっぱり今後が気になる。1集冒頭の未来のシーンへ繋がるのはいつなのか、ストーリーは全体のどの辺りまできているのか。


“period”という英単語には「ある期間」「ある時期」という意味がある。これはハルとヨキの子供時代を表しているのか?もしくは、父親と家で過ごした時期(1集)、施設で過ごした時期(2集)、いとこのアパートで過ごした時期(3集)とそれぞれの期間を指しているのかもしれない。*1
夏目漱石が彼岸過ぎまで連載をすることを依頼されて「彼岸過迄」という題の小説を書いたように、一定期間ごとの連載だから“period”とつけたんだったりして、と私はけっこう真面目に想像している。吉野さんは漱石がお好きとのことだから。
これからどのような子供時代が描かれるのか、先は長いかもしれないけれど、しっかりと最後まで見守りたい。
だからどういう事情かわかりませんが、月刊IKKI様、今後安定した掲載をどうかよろしくお願いします。

*1:2chでみかけた意見を支持。私は“period”はいかにして暴力を終わりにするか、という意味だと思っていたのだけど、この語の意味を聞いて個人的にすごく納得した。