山田詠美「蝶々の纏足」

蝶々の纏足・風葬の教室 (新潮文庫)

蝶々の纏足・風葬の教室 (新潮文庫)

高校の時に友達になれそうだった女の子が貸してくれたのだった。
その時これを読んだ私にはなんだか大人の男と女の話に思えたけれど、読み返してみて、やはりここに描かれているのは「少女」だと思う。今回は、今日は、少女たちのディスコミュニケーションの物語だ、と思った。

こういうのって、文学でなければ意味ないなあと思う。
瞳美から見たえり子と瞳美との関係はあくまで、対立するものとしての「女」と「女」だったのだろう。
でもえり子の目からはそうでなかった。えり子は自分の媚におそらく自覚的だったうえに、瞳美には見えていない目で、ふたりの世界を見ていたのだろう。瞳美には周囲がよく見えていたけれども、このふたりの関係に関してだけは違っていたんだ。
えり子が語り手のバージョンもあればわかりやすいけど、それじゃ面白くない。だからこれは漫画やドラマじゃだめなのだ。

結局えり子って恐ろしい女よ……ということに尽きるなあ。悪気のないようなとこが一層怖い。