芥川龍之介「偸盗」

地獄変・偸盗 (新潮文庫)

地獄変・偸盗 (新潮文庫)

紺の水干に揉烏帽子の隻眼の男。弟は朽葉色の水干に黒鞘の太刀、眉の秀でた、恐らくは美青年。芥川龍之介の小説は、舞台も人物も、その着るもの、空の色、初めから終わりまで完璧に用意して抜かることなく完璧に演じさせる。凡人は安心して眺めていればいいだけだ。


『今昔物語』の説話集に取材を得た「説話もの」のひとつ。
沙金という美しい女盗賊を頭とした盗賊団が平安京羅生門に集い、藤判官の屋敷を襲いに行く夜の話。沙金の周りにめぐるさまざまな「愛」と「憎」の生きていく苦しみ。


「九」のオチがいまいち理解できなくはあった。