谷崎潤一郎「瘋癲老人日記」

鍵・瘋癲老人日記 (新潮文庫)

鍵・瘋癲老人日記 (新潮文庫)

瘋癲老人日記 (中公文庫)

瘋癲老人日記 (中公文庫)

77歳の卯木督助という老人が、首の骨や手の痛みなどに悩まされたりしながら綴る日記体小説。漢字とカタカナで書かれており外来語には傍線が引かれている。
督助は息子・浄吉の妻である颯子(車を乗り回したり長高級な猫目石をキスと引き換えにねだったり、春久を別荘に連れ込んだりする女)に惹かれている。彼女と何かあると血圧が上がる。


・爺さん憎めない。体や手術のことをあれこれ心配したりしている反面、一部のことに対して気力ありすぎ。なんとか颯子と二人きりになれるよう思案するとか可愛いじゃないか。颯子の足型を取って仏足石を作ろうとするところは傑作。
・そんな様々な出来事が起こり血圧が上下しながらも、あまり大きな起承転結が見られないのは「細雪」に近いかも。
・むしろこの小説の起伏=爺さんの血圧?
・どんだけの大金持ちだよ。どこからの金なの?
・食べ物や演劇などいろいろなものが出てきて文化的にもおもしろい。
・カタカナで日記をつけるのがこの当時の男性には普通なの?


失敗すると死んでしまうかもしれない手術を嫌だなあ嫌だなあと思っている箇所とか、墓をどこにつくろうか考えるとか、割と普通のこととして「次の夏はないかもしれない」と思うこととかがやや切なかった。


何よりカタカナに慣れず、読むのにものすごく時間がかかった。