芥川龍之介「奉教人の死」

奉教人の死 (新潮文庫)

奉教人の死 (新潮文庫)

切支丹物の短編集。
風土論的「神神の微笑」、キリスト教への独特な切り口が伺える「さまよえる猶太人」「るしえる」などなど。表題作の「奉教人の死」は美談なのだけど、私は皮肉っぽいオチのものの方が好きなんだ(いやな奴だぜ)。
「報恩記」が一番凄かった。
結び目が解けたところで「あ、これってミステリだったんだ」と気づくような興奮が隠されてる。複数の人物によって語られる、芥川のあの短編に似ているけどこれもいい。タイトルが上手い。恩に報いる、報恩記というタイトルにハッとしたのは一度ではない。