よしもとばなな「ハゴロモ」

ハゴロモ (新潮文庫)

ハゴロモ (新潮文庫)

確かにおとぎ話のような小説だった。
川に囲まれた町に住む、地元の不思議な人々や、そこで起こる奇跡や。
これまでばななさんの描いてきた癒しや再生の物語を、ごくごく純化したようなおとぎ話。


傷ついて何もかもなくした主人公の周りに、ちゃんと出会うべきものが用意されているのって、やっぱ「お話」だからなんじゃないのー?……なんてひねくれた感想をもってしまうのは、私がそれほど悲しいこともなく、疲れてもいない証拠なのかなァ。
もう少し毒というか異質な何か(不倫とか南米とか宗教とか)を味わいたい気はする。それは今、他人や物事に対する活力は充分にあるということなのかもしれない。