川端康成「古都」
- 作者: 川端康成
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 1968/08/27
- メディア: 文庫
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捨子にされたのは千恵子だが、村で奉公している苗子のほうが却って自分と千恵子とは身分ちがいだと感じ、千恵子をたずねることができない。
彼女たちの娘らしい心の機微が京都の年中行事とからめて描かれる。
片方は呉服問屋の娘として愛情ぶかく育ち、片方は杉山の自然のなかで強く生きていた。「衣」と「住」、暮らしそのものである環境のなかで生きる登場人物が瑞々しい。
着物、帯の図案、クレエの絵、といった小物もひとつひとつがイメージにうったえてくる。
恵子と苗子の姉妹は(当時のことであるから)男性に対して決定権を持つことはないけれど、それ以外のことに関しては頑固なくらいに芯の通ったところがあって魅力的だった。
それに比べて千恵子のまわりの男達は、彼女の容色のよさに疑いもなく惹かれているのだろうが、彼女たちの内面をどれほど知っているのか少し疑問。
美しいものが至上であるというのが、この世界の価値観なのかもしれないけれど。
あるいははじめからこの小説は、心の純粋さと外見の美しさを別個のものとして描いていないのかもしれない。
最後の雪の場面の透明感がとても印象深かった。
絵を観るような、そんな小説だった。
田辺聖子「ジョゼと虎と魚たち」
- 作者: 田辺聖子
- 出版社/メーカー: KADOKAWA/角川書店
- 発売日: 1987/01/01
- メディア: 文庫
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そんな私でも今回はハマった、どまんなか恋愛短編小説集。
恋愛小説は苦手なのに、私は今でも少女漫画読みだ。
それは恋愛自体に興味があるというより、女の子の感情の中に自分を見つけたいからという意味が大きい。
「ああ、そういう時ってあるなあ」「自分もそう思っていたんだ」ということを確認できたときのよろこび。それが心地よくて、なるべくなら短編を合わせた、色々な女の子や物語が出てくる本を私は好む。
だからこの小説を読んだ時、けして安易な蔑称としてではなく、「少女漫画的なもの」を感じた。
こういう感情になってしまうことがある、あるいは、こういう男の人っているよね、こう考えてんだろうね……ということに気づかされる快感。
登場人物も十人十色なのに、いくつもの自分やこれまで出会った誰かを、この本のなかには見つけることができる。
たとえば女について。
大庭とはまだ一年ぐらいのつきあいであるが、どきどきする心弾みは薄れていなくて、以和子は好きな大庭と会う、最初の一瞬は、彼と視線を合せるのが羞ずかしいのであった。
(「雪の降るまで」)
あるいは、男について。
連は「海の見える別荘が夢だった、と話していた。
もっとも、これも女といっしょで、(そこにある)と思ったら、実際に行かないでも満足できるらしいのだ。
(「男たちはマフィンが嫌い」)
そして、彼らの関係を。
不機嫌というのは、男と女が共に棲んでいる場合、ひとつっきりしかない椅子なのよ……
(「荷造りはもうすませて」)
彼らはすでに結婚していたり、バツイチだったり、若い盛りは過ぎている。
そんな彼らが経験を重ねた恋愛を通して自らの感情に向き合っているのをみると、この小説をもっと「わかる」ようになるのは歳を取ってからこそではないかと期待してしまう。同時に、「全然わからない」大人になってしまいそうな可能性も大いにあって、それって格好悪いなあと心配にもなる。
10年後、20年後、読み返したらどう感じるだろう。
この本は、その時私がどれだけ「少女」であり、どれだけ「大人の女性」であるのか、両方を試してくるだろう。
それを楽しみといえるような自信はないけれど、その頃までずっと大事に取って置きたくなるような、そんな本だ。
松浦理英子「葬儀の日」
- 作者: 松浦理英子
- 出版社/メーカー: 河出書房新社
- 発売日: 1993/01/08
- メディア: 文庫
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- 「葬儀の日」
自分の鏡像としての「笑い屋」の彼女と親密になる、「泣き屋」の少女。
他者であるはずの存在にもうひとりの自分をみて閉鎖的な世界に籠り、
それ以外の存在を拒絶すれば、社会からは軽蔑される、弾かれる。
このような完結したコミュニケーションのとりかたは、
「体なら1コでいいのに」と歌った川本真琴のようで、
あるいはエヴァンゲリオンのようで(たとえがただの自分の趣味か)、
なんだか90年代に流行ったよねえという既視感があるのだけど、これは1978年の作品。
彼女達の関係を河の両岸になぞらえた比喩はとても印象的。
ストーリーや文章にもまったく無駄がなくて、まさに「原型」というにふさわしいデビュー作だと思う。
- 「乾く夏」
三角関係、レズビアンを思わせる女性二人の駆け引きに富んだ会話、
ここにも後に発表される作品の初期形を発見できる。
- 「肥満体恐怖症」
女社会のいじめ的いやらしさがリアルで痛かった。
おそらく「肥満」の描かれ方が多少コミカルなのがこの物語の救いになってるんだろう。
ここでもサド的、マゾ的なモチーフがあらわれ、興味深かった。
いくえみ綾「子供の庭」
- 作者: いくえみ綾
- 出版社/メーカー: 集英社
- 発売日: 1995/06
- メディア: コミック
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その原点であり、真っ向から家族をテーマに据えているのがこの作品だ。
もちろん別マらしく恋愛要素も出てくるのだけれど、主軸はあくまで家族の話。
他の作品と比べてみても、どちらかというなら「who」は家族関係から紡がれる少女自身を、「かの人〜」は個性的な家族それぞれの人間模様を描いているのに対し、家族の「関係」それ自体を正面から扱っているのはやはり「子供の庭」だ。
主人公は中学三年生。父と祖母(オババちゃん)と平和に暮らしているなかで、離婚した母が突然亡くなり、母に引き取られていた兄が家に戻ってくる。
この兄がちょっと性格の悪い奴で、家族は気を遣ったり振り回されたりするのだけど、この歳になってくるとそんな麦(兄の名前!)がいじらしく可愛く見える。彼の心のわだかまりは至極もっともだと思うし、心優しいみんなが傷つかず暮らせればいいのにと願わずにいられない。
伏線の張り方もすばらしくて、いくえみ作品のうちでは地味だけれど、忘れずにいたい傑作だと思う。
一冊になっている文庫版も一応リンク。本当は読んだのはそっちなんだけど、絵が出ないから……
- 作者: いくえみ綾
- 出版社/メーカー: 集英社
- 発売日: 2007/04/18
- メディア: 文庫
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文庫本ノートをカスタム
最近発売されたコクヨの文庫本ノート。
コクヨ 文庫本ノート Casual 横罫 70枚 ノ-BU27B
- 出版社/メーカー: コクヨ(KOKUYO)
- 発売日: 2008/09/01
- メディア: オフィス用品
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用意したものは、
・文庫本ノート
・ビニール製のクリアブックカバー(メーカー忘れた、ハンズで購入。100均などにもあると思う)
・コレトの「月間計画」(日付書き込み式)
・ポストカード
なかなかA6サイズに収まるマンスリーノートが見つけられず、コレトの月間計画の下部をハサミで少し切って差し込むことに。ちょっとガタガタになってしまった……。
このノートは日付を自分で書き込むタイプ。
手間ではあるけど、中途半端な今の時期から始めるのにはちょうどいいかな。
さらに好きなポストカードを入れてお気に入り仕様に。
文庫本サイズ=A6=はがきサイズだからぴったり!*1
もちろん雑誌の切り抜きなんかを入れてもいいし、好きなブックカバーをつけてもいいし、オリジナルに楽しむ事ができるんじゃないかと思う。
さて、この自作ノートを飽きずに続けられるかどうか?
*1:追記訂正。よく調べたらはがきは短い方の辺が5mm少ないそうです。http://www.ask-maker.com/modules/pukiwiki/31.html
海野つなみ「回転銀河(5)」
- 作者: 海野つなみ
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2008/08/11
- メディア: コミック
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本当にキャラクターを大切にしている作家さんだなあと思う。表紙からして意外。この二人に絡みがあったのねー。
まさに人に歴史あり、あの話のあの人やあの人は実はこういう思いで動いていたんだなあと。そういう視点を知ると、自分まで人に寛容になれそうな気がする。
でも、そろそろ双子と和倉さんの話は加速しちゃってほしいなと願います。
松崎君の話、自意識が痛かったところがよかった。2巻の環の話とも通じる気がする。
彼はこれからどうなるのかな。いい男になれ!
しまじろう君の夏
この夏駅に設置されている、しまじろうの「おやこでたいけんカレンダー」という広告。カレンダーの一日一日に、しまじろうのその日の目標とイラストが描かれている。
それは「かくれんぼを する」とか「おもいっきり じゃんぷ」とか、はたまた「まるいものを さがす」とか「かげを ふむ」とか、本当に小さなことだけど、彼にとってはまだどれもが新鮮なことなんだろうと思うと輝かしい。
そんな夏を過ごせる大人がどれだけいるだろう。
しまじろう……奴はやる男だよ。
ドキドキ31目標! おやこでたいけん カレンダー
http://www.shimajiro.co.jp/cm/st0808.html